噺っ子連 2013・6・22(土)打上げ

 打上げを稽古場の蔵で。

 今まで、稽古、発表会後、アルコールっ気はまるっきりなかった。
 今日は、酒の差し入れが多かったのか、アルコールが振舞われた。
 もちろん、あたしもそうだが、梅八(うめはち)も呑まない。
 弁当を作った世話人連中も参加して賑やか。

 真仮名(まかな)が酔ってきたのか、「師匠。落語はいいですね」と興奮気味に言い出した。
「そんなにいいかい?」
 と、わざと大きめの声で訊くと、
「はい。あたし、人生ぇ変わりました」
 と言い出した。

「師匠。聞いてください。今日、[お花半七]を演ってまして、感じたんです」
「なにを?」
「登場人物のお花さん、半七つぁん、それに叔父さん、叔母さん、この四人があたしを
応援しているんじゃないかって、感じたんですよ」
「すごいことだね、そいつぁ」
「だから、下手な落語を演って、登場人物に笑われちゃいけないと思って、一生懸命にやりました」
「袖で聞いてて思ったよ。真仮名(まかな)は一生懸命というより、世の中のことをすべて忘れて
魂を打ち込んでいるなって」
「本当ですか?」
「左甚五郎がそうなんだよ」
「落語に出てくる?」
「そう。世の中のことをすべて忘れて、これから彫ろうとする作品に魂を打ち込んだ名人なんだよ」
「で、蟹が動いたり、竹の水仙が咲いたりしたんだ…」
「だから、今日の真仮名(まかな)の演じた登場人物は生き生きとしていたんだ」

「落語って本当に凄い。いろんなことを教えてくれるんだもの。だから…、今日だって…、あたし…」
 この辺りから、真仮名(まかな)の口調が怪しくなってきた。
 酒のせいばかりじゃない。今日の自分の高座の出来から、達成感を掴んだのであろう。
「ほんとに…、落語を…、稽古して…、続けてきて…」
 両眼は潤んできている。
 泣き出すのは時間の問題と思った矢先、
「…、よかったぁ!」
 と同時に、ワァーと泣き声を上げた。

 両の瞼に当てた両手の指の間から、涙は溢れるように流れ出している。
 打上げに参加している二十人の目が一斉に真仮名(まかな)に注がれた。
 ワァー、ワァーは止めどもなく続き、落語の素晴らしさを叫ぶ声も途切れ勝ちではあったが、
みなの感動を呼んだ。
 梅八(うめはち)がテッシュペーパーの箱を二つ、真仮名(まかな)に持たせた。
「鼻水も、拭かして、ください」
 と言いながらも、ワァーワァーは続いた。
 すると、真仮名(まかな)の前に座っていた、東京から鑑賞にやってきた貴尾(たかお)が
堪え切れずに言い放った。
「あたしも真仮名(まかな)さんの気持ちはわかります」
 と、同時にワァーと泣き出した。

 これをきっかけとしたかのように、全員が涙を流しながら笑い転げた。
 梅八(うめはち)が、真仮名(まかな)に、
「師匠まで泣かしちまって、しょうがねぇなぁ、この女は」
 と、大声でからかった。

 そこで、あたしも黙ってはいられないので、テッシュで目を拭きながら、
「真仮名(まかな)。こういう紙はな、本来、もっと色っぽいとこを拭くもんなんだぞ」

 こんな最中に洒落を言って、いいものどうか。
 真仮名(まかな)の達成感は性的極致に近いものだったんだろう…。

この記事へのコメント

真仮名
2013年06月24日 13:04
圓窓師匠へ

先日の発表会、ありがとうございました。
師匠のブログを読んで
若干照れています(笑)。
泣いたのは覚えていますが、
号泣していたんですね(笑)。
翌朝、
有難亭の兄さんメンバーにもからかわれました(笑)。
今日は燃え尽き症候群のようになっています。
でも、燃え尽きちゃあいけませんね。
ここからですね。
ますます落語が好きになりました。
今後も、一層の御指導をお願いいたします。

真仮名
磨美絵
2013年06月24日 18:54
圓窓師匠へ

落語の素晴らしさを肌で感じる
素敵なひとときでした。
本当にありがとうございました。

師匠…

色っぽいとこいっぱい拭いてきたんですね…

色っぽい絵を描けるよう
またアドバイスよろしくお願いいたします。

磨美絵

耕作
2013年06月24日 21:02
圓窓師匠へ

有難亭一心会のご指導大変ありがとうございました。
初高座で、とても緊張しましたが、楽しく演れました。
思わぬところで、噺がとんでしまいましたが、途中で
一瞬、飛んでるツルが見えました。
真仮名ちゃんが、感激して号泣していたにもかかわらず、
酔っ払って夢中でエロ話していた小生は反省しきりであ
ります。
師匠の一席「不孝者」は、初めて聞きました。何か、と
ても引き込まれる噺で、お客さんも固唾を呑んで聴き入
っていました。とても勉強になる噺、ありがとうござい
ました。
次は、ぜひ「かぼちゃ屋」を教えてください。よろしく
お願いします。


圓窓
2013年06月25日 00:51
耕作(こうさく)へ。

>> 初高座で、とても緊張しましたが、楽しく演れました。思わぬところで、噺がとんでしまいましたが、途中で一瞬、飛んでるツルが見えました。

 ウワアーオー!!! もう名人の心境だね(笑)

>> 師匠の一席「不孝者」は、初めて聞きました。何か、とても引き込まれる噺で、お客さんも固唾を呑んで聴き入っていました。

 珍しい噺だからね、、。

>> 次は、ぜひ「かぼちゃ屋」を教えてください。よろしくお願いします。

 江戸崎は旨い南瓜の産地ですから、ご当地噺として仕上げましょう



耕作
圓窓
2013年06月25日 00:56
磨美絵(まみえ)さんへ。

>> 落語の素晴らしさを肌で感じる素敵なひとときでした。

 肌で聞いてもらって、興奮しますよ。(笑)

>> 色っぽいとこいっぱい拭いてきたんですね…。
色っぽい絵を描けるようまたアドバイスよろしくお願いいたします。

 手取り足取りのアドバイスは高齢者には無理です。(笑)
圓窓
2013年06月25日 01:01
真仮名(まかな)さんへ。

>> 師匠のブログを読んで若干照れています(笑)。
泣いたのは覚えていますが、号泣していたんですね(笑)。

 シクシクなんてぇもんじゃないよ、ゴウゴウだったよ。
 号泣に至るまでの努力がよかったんだね。いい号泣だったよ、、。
 嫌われるような号泣はおよしよ、、、。(笑)

>> 今日は燃え尽き症候群のようになっています。
でも、燃え尽きちゃあいけませんね。ここからですね。
ますます落語が好きになりました。

 そうだよ。無駄に燃え尽きても駄目だよ。

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